中国国家薬品監督管理局(NMPA)直属の「中国医薬報」の公式アカウントは2024年3月19日、化粧品安全評価報告(完全版)の提出に関し、当局のコメントを引用する形で発表。現時点で確認できる内容は限定的ですが、今後の措置が期待できます。

中国の全人代(全国人民代表大会)が3月11日に閉会した後、「化粧品の安全性評価管理の適正化に向けた諸措置(意見募集案)」と題したNMPA当局の文書が業界内で出回りました。この文書は当局が公式に公表したものではなく、現在策定中の意見募集稿が流出したものとされていますが、中国国内ではこの文書の真偽を巡り、情報が錯綜する状態が続いていました。

こうした状況に初めて、国家薬品監督管理局が主管として発行している「中国医薬報」が、2024年3月19日号で当局からの情報として「国家薬品監督管理は化粧品の安全性評価管理の最適化に重点を置いている」と題する記事を公開、当局が正式に「化粧品安全評価報告書(完全版)の移行に関わる緩和措置」について検討を行っていると追認しました。

WWIPでは、3月14日に中国の業界関係者内で閲覧されている公式発表前の文書を入手し、内容の確認を行なってきましたが公開前の文書であったためリリースは、控えてきました。昨日「中国医薬報」で追認されたことを受け、当文書の概要も含めここにご報告します。

目次

中国医薬報 3月19日版 記事内容

出典元:中国医薬報 2024年3月19日 国家薬品監督管理局主管
http://bk.cnpharm.com/zgyyb/2024/03/19/1.html

記事概要(★一部、直訳のため文意がとりにくいところがあります。また、読みやすくするため内容を意訳、補足しています。(文中、(ーー)の部分)

最近、記者は国家薬品監督管理局から、初期段階での全面的な調査に基づいて、化粧品の安全性評価と管理を最適化するためのいくつかの対策の研究と策定を組織し、省の医薬品規制部門を通じて広く意見を求めていることを知りました。  

最適化策は、主に、安全性評価システムの構築の推進、技術指導の強化、原料データリソースの統合、評価報告書管理メカニズムの革新の4つの部分から構成され、また、12の施策が化粧品の安全性を実現するための関連要件をさらに詳細に規定している。また、関連する規制・技術支援部門も、安全性評価に関する技術指導文書や技術ガイドラインなどの補足文書を集中的に策定しています。

最適化策と補足文書は、協議後、速やかに公開されます。 化粧品は健康関連製品であり、企業は製品を発売する前に化粧品の安全性を十分に評価し、製品の安全性を確保する必要があります。 2020年に公布された化粧品監督管理規則は、製品の安全性評価を効果的に実施するために、化粧品の登録を規定する安全性評価システムを導入しました。(この導入により)申請者は、出願前に、自ら、または専門機関に委託して、安全性評価を実施することとなりました。 中国の化粧品業界は、安全性評価の遅れをとっています。 2021年5月に化粧品安全性評価システムが導入されて以来、化粧品会社の全体的な安全性評価レベルは大幅に改善されましたが、国際的な先進レベルとはまだ大きなギャップがあります。 化粧品安全性評価システムの構築と改善は、国際的な化粧品業界の発展の方向性に沿ったものであり、中国の化粧品業界の質の高い発展と高度な安全性を促進しています。 化粧品の監督管理に関する条例および関連規制は、2024年5月1日から化粧品の安全性評価報告の完全版を実施するとしています。 化粧品の安全性評価報告の完全版への移行は、一般的に大きな困難を伴うことを考慮して、国家薬品監督局の化粧品監督部門は、企業が化粧品の安全性評価を標準化し、企業の安全性評価に存在する問題と困難を解決するのを支援するために、多くの関係者から提案を聞いた後、広範な検討を実施、最適化策を起草。業界が体系的かつ完全な化粧品安全性評価システムを構築することを奨励し、化粧品安全性評価システムの円滑で秩序ある実施を促進するとしています。 ほとんどの化粧品の研究開発サイクルは長く、一般的に少なくとも1~2年の計画開発段階を経ること、および研究開発プロセスにおける基本的なステップである安全性評価を考慮すると、企業はもっと早い時期に評価を実施する必要性があると理解されています。(そのため、)国家薬品監督局は、2024年5月1日以前に安全性評価の対象となった化粧品に6か月の移行期間を設け、(この期間内であれば)企業が製品を申請する際に安全性評価報告書の簡易版を提出できるようにする予定です。 移行期間の設定については、国家食品薬品監督管理局は業界や関連する専門家の意見をさらに募る予定です。 安全性評価報告書の並行管理の実施は、業界の実態に即した発展を尊重し、企業の期待に沿うだけでなく、化粧品の監督管理に関する規則および化粧品安全性評価技術ガイドライン(2021年版)の立法上の期待にも適合し、「継続的な改善」の安全性評価の概念にも合致しています。 業界関係者によれば、企業内に存在する困難に体系的に対応するための最適化措置は全体として、企業の安全性評価の能力レベルと安全性評価レポートの科学的な面の向上に役立つだけでなく、運用レベルでの具体的なガイダンスと支援の提供にも寄与するとのことです。 国家薬品監督管理局が改革を推進し、ビジネス環境を最適化し続けるための重要な措置として、業界が直面している課題を効果的に解決支援するため、技術指導文書、技術指導原則、原料安全性データを提供します。さらに、最適化対策は、化粧品の「二重サイクル」を形作ること(国内生産と海外かの企業の生産、双方を見据えて評価概念を作ること)に寄与します。 一方では(海外企業を指す)、より国際的に認められたルールに沿った評価の概念とアプローチを採用することにより、海外企業の化粧品市場参入を促し、国内市場での製品供給を豊かにすることであり、もう一方では(国内企業を指す)、国内企業に安全性評価の標準化と動物実験の削減を指導することにより、中国の化粧品の海外に進出を促します。

化粧品の安全性評価管理の適正化に向けた諸措置(意見募集案)と題する文書の概要

以下、3月14日にWWIPが入手した「化粧品の安全性評価管理の適正化に向けた諸措置(意見募集案)」と題する文書の概要を記載します。当文書が公式に当局から公開されたものではないことをご留意ください。

化粧品安全評価管理の強化に伴う諸措置(意見募集稿)
 化粧品業界の安全評価能力とレベルを引き上げ、化粧品安全評価業務を正しく遂行し、化粧品安全評価制度を秩序よく実施できるよう促すべく、『化粧品監督管理条例』、『化粧品登録登記管理弁法』、『化粧品安全評価技術ガイドライン(2021年版)』(以下『ガイドライン』と略す)等の法規に則り、以下の措置を定める。

一、安全評価システムの構築及び製品安全保障レベルの強化

(一)安全評価を強化するためのインフラ整備。

(二)企業の製品の生命周期(*品質保証期限)に対する管理責任の強化。

(三)化粧品の安全評価に関する学科の設置と専門的人材の育成。

(四)化粧品安全評価の業務上の交流及び技術的協力関係の強化。

注;(一)〜(四)の具体的な内容は省略します。

二、技術指導及び化粧品安全評価能力の強化
(五)安全評価に関連する技術の応用能力の強化。

注;具体的な内容は省略

(六)リスクのある物質に関する適切な評価の強化。

化粧品原料リスクの識別及び、リスクの分析・抑制に関する研究を強化する。関連する技術指針を制定し、企業が化粧品の中に存在しうる、安全管理上リスクのある物質に関する識別と評価を指導する。(抜粋)


(七)製品の品質安定性に関する研究の強化。

理化学的安定性、防腐剤の効果測定、包装材料との適合性等に関する技術指針の制定を促進する。(以下、略)

三、原料の数値リソースの整合及び原料数値データの使用利便性の向上
(八)原料安全評価データの使用に関する規範。

化粧品原料数値データの使用ガイドラインの制定を推進するとともに、企業が化粧品の安全評価を実施する時に、『ガイドライン』の関連する規定に即した上で、上市済み製品の原料使用履歴を参照することを可能にする(以下、略


(九)原料安全評価に関連するデータ情報の提供。

国際的に権威性のある化粧品安全評価データ索引を編纂し、上市済み製品の原料使用データの収集・整理を推進することにより、化粧品原料安全データ情報を充実させる。履歴上最大使用量を安全評価の根拠として見做さなくなった時には、これを(従来の履歴上最大使用量に代わる)企業の化粧品安全評価の際の参照先とする。(抜粋


(十)原料数値データの共有プラットフォームの構築と改善の指導。

化粧品企業と原料企業の協力関係を強化させ、化粧品企業が主体的に原料の安全性情報を獲得できるようにし、原料企業が化粧品企業に積極的に協力して原料の安全性情報を提供できるよう指導する。(抜粋

四、評価報告管理体制の刷新及び製品流通の質的改善・加速の促進。
(十一)安全評価報告書を提出する際の類別化制度の設置。

一部の一般化粧品の安全評価報告書を企業側に管理させ、検査に備えるよう許可する。(抜粋


(十二)化粧品安全評価自己点検の実施の指導。

化粧品安全評価報告書は製品登録届出資料の重要な一部分を成すため、製品の安全評価報告書に対する自己点検の指針を制定(中略
 2024年5月1日からは、化粧品の登録人及び備案人(登記者)は、『ガイドライン』と本規定及び関連する指針に基づいて安全評価を実施した上で、登録の申請或いは届出の時に安全評価資料を提出すること。2024年5月1日より前に安全評価を実施した化粧品については、2024年11月1日以前に登録の申請ないし届出をしたものに限り、化粧品の登録人及び届出人は、『ガイドライン』の要求に基づき簡略版安全評価報告書を提出することができる。2024年11月1日からは、使用済みの化粧品原料目録に記載された履歴上最大使用量をもはや安全評価の根拠とは見做さない(ので注意すること)。

WWIPの見解

移行期間の緩和措置は「2024年5月1日より前に安全評価を実施した化粧品についてーー」と条件があり、非常に限定的である。

しかし、当文書(意見募集稿とされた文書)に記載された12項目は非常に具体的で、日本企業を悩ませてきた化粧品製品申請における化粧品製品安全性評価報告書(完全版)移行に伴う難題を解決できる* 有意義で価値がある施策である。* 全て解決できるわけではないが大きな前進と言える。

また、中国医薬報の記事には、海外の化粧品に対し、中国国内とは別の評価方法を導入する可能性に触れており、この点も大いに期待できる内容である。

中国医薬報の記事中(最適化策と補足文書は、協議後、速やかに公開されます)とあるが、まさに一刻も早い正式な発表を望むばかりである。

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