中国全国両会で政協委員が「化粧品安全評価報告書<完全版>」を化粧品業界が直面している課題として言及
中国医薬報社のウェブサイトである中国食品薬品網(http://www.cnpharm.com/)に、2024年3月9日付で「完善安全评估体系,培育化妆品新质生产力(安全性評価システムを改善し、化粧品の新たな品質生産性を育成する)」という記事が掲載されました。
中華人民共和国全国人民代表大会(全人代)と全国政治協商会議(政協)は併せて「両会(2つの会議)」と呼ばれ、当年の成長率目標や、中国経済の活性化に向けた財政政策を議論する場であることから、中国国内だけでなく、世界中から注目を集める大変重要な会議であり、もちろん、日本のニュースでも取り上げられています。
この3月に第十四回第二次全国人民代表大会(全人代)と全国政治協商会議(政協)が開かれました。両会期間中に政協委員である守正创新生物科技(天津)有限公司(Integribiotech)董事長の鄭春陽委員は、次のように声をあげました。(★一部、読みやすくするため内容を意訳しております)
中国の特色ある規範と効率的な化粧品の安全評価システムを確立し、化粧品の新たな品質生産性を育成する。
現在、化粧品業界が製品安全性評価報告書の完全版※1を提出するには、現実的な課題がある。
我が国の毒理学研究は比較的歴史が浅く、開発期間が短い為、国内の大部分の原料は毒理学データが不足している。また、毒物学試験自体の費用が高く、試験も長期間に及ぶ為、大半の企業は短期間で多くの原料の毒物学的研究を実施することが困難である。もし、化粧品安全性評価報告書<完全版>*1の要求を実施するならば、多くの原料は毒性学データが不足している為、製品(化粧品)に配合できず、技術革新の基礎を失うことになる。(以下略)
鄭春陽委員は、化粧品の安全性評価基準は、業界の特性や実際の用途を考慮して調整する必要があるとの考えを改めて示し、以下を全国両会で提案しました。
※1 化粧品安全評価報告書<完全版>
「化粧品安全評価報告書」とは、2021年の化粧品監督管理条例施行以降、NMPA申請時に提出しなければならなくなった評価レポート。段階的措置として、2024年4月30日までは同報告書の<簡易版>が、2024年5月1日以降は<完全版>が必要となるが、完全版の要求は非常にハードルが高いため、化粧品業界全体の大きな課題となっている。
※2 使用済み化粧品原料目録(2021年版)/ 原文:已使用化妆品原料目录(2021年版)
中国では、基本的に中国で過去使用された実績を持つ成分の使用を認め(一部禁止に転じたものもあり)、新原料と区別している。当該目録はそのリストを指す。
※3 最高歴史使用量 / 原文:最高历史使用量
「使用済み化粧品原料目録」に収載されている成分の、中国で過去に化粧品へ使用したことのある最大配合量を指す。化粧品安全評価報告書<簡易版>では、当該使用量も安全性根拠の1つとして認められるが、<完全版>では認められないものとされている。
<WWIPからのコメント>
弊社ではこれまでも以下のニュースリリースでもご案内しました通り、2024年5月1日から施行予定の安全性評価報告書<完全版>への移行についての動向を常にウォッチングしております。
https://wwip.co.jp/20240206-01/
今回の鄭委員のコメントは世界中が注目している中国全国両会内での発言であること、また、提言内容も実務に即した具体的な内容であったことから、NMPAに対しても相当大きなインパクトがあったのではと考えられます。
既に3月も中旬に差し掛かってきており、5月1日まで約1カ月半になりましたが、このような世論も大きく動かすような重要な会議の場で発言があったことは、NMPAから何らか次の動きが発信される予兆であると考えることも可能ではないでしょうか。
4月中のNMPAへの登録あるいは登記申請の目途が立たず、残念ながら5月以降の中国への進出を断念しようとされていた化粧品メーカー様にとっては、今後のビジネスに繋がる良い状況が舞い込んでくることになるかもしれません。
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