上海NMPA局による「上海浦東新区オーダーメイド化粧品サービス審査規則(試行)」(意見募集案)の公告について
上海NMPA局が、2023年4月10日に「上海浦東新区オーダーメイド化粧品サービス審査規則(試行)」(意見募集案)の公告を発表しました。
株式会社ワールドワイド・アイピー・コンサルティングジャパン(東京都港区以下「WWIP」)は、本通知の内容を検討、以下、ポイントをまとめました。
一、本規則の対象
上海浦東新区に設立された化粧品販売店、販売窓口、その他の事業所において化粧品のオーダーメイドサービス活動及びその監督管理に従事する化粧品備案者※1及び境内責任者※2。
WWIP注:※1 備案:
中国における普通化粧品の手続き方法をこのように呼びますが、直訳すると「届出」の意味です。「登記」と読み替えても差し支えありません。
WWIP注:※2 境内責任者:
中国における協力会社です。海外企業がNMPA手続きを行う際の書類準備や、手続き完了後の輸入に協力し、トラブルが生じた際の当局対応やリコールの協力等も行います。
二、本規則の化粧品のオーダーメイドサービスとは
化粧品備案者および境内責任者が、消費者の個別のニーズに応じて、備案済みの普通化粧品(子供用化粧品、目元用化粧品、新原料使用化粧品等を除く)を事業所内に設けた専用エリアで、化粧品の中身に直接触れる形で小分け充填や再包装のサービスを提供すること。
三、化粧品オーダーメイドサービスの許可申請
許可の申請は、以下の条件に合致する必要がある。
- 法律に基づいて設立された企業であり、化粧品のオーダーメイドサービス(以下、オーダーメイドサービスと略す)を申請する事業所に営業許可証があること。
- オーダーメイドサービスの対象となる化粧品の国内備案者(WWIP注:中国国内申請)、或いはオーダーメイドサービス化粧品の海外備案者と同じグループ(WWIP注:日本企業の支社等)、もしくは、海外備案者が当該オーダーメイドサービスを展開する権限を授けた境内責任者で、相応の化粧品生産品質管理経験を有していること。
- オーダーメイドサービスに使用する化粧品が既に備案を完了していること。
- オーダーメイドサービス製品に対して、その全工程のリスク評価とリスク管理、及び製品の不良反応の監視と評価を行う能力があること。
- オーダーメイドサービスに適した場所、環境条件、検査施設及び設備を備えていること。
- オーダーメイドサービスに適応する技術者と検査員がいること。
- オーダーメイドサービスに合わせた、原料検収、サービスプロセス及び品質管理、設備管理、製品検査及びサンプル保存など化粧品の品質安全を保証する管理制度を有すること。
許可申請の方法:上記規定条件に合致していることを証明する資料を提出し、浦東新区市場監督管理局に申請する。
四、海外備案者の場合
オーダーメイドサービス化粧品の海外備案者は、オーダーメイドサービスを展開する権限を付与した境内責任者の化粧品備案申請及びオーダーメイドサービスの品質管理状況を監督しなければならない。
境内責任者がオーダーメイドサービスを展開するには、当該化粧品海外備案者の授権を取得し、国家化粧品登録備案情報サービスプラットフォームに授権書類を提出しなければならない。
授権書類は少なくともオーダーメイドサービス化粧品の名称、委託者名、受託者名、授権期限、オーダーメイドサービスを行う場所の住所、受委託者双方の署名と日付を明記しなければならない。
五、製品の備案管理
1. オーダーメイドサービス企業の名称と住所は、それぞれの項目に見出しを付け(WWIP注:名称:ーー、住所:ーー)、化粧品パッケージの見える面に表示しなければならない。
2. オーダーメイドサービス化粧品に複数のパッケージがある場合、いずれか1つのパッケージ画像のみを提出し、国家化粧品登録登記情報サービスプラットフォームにアップロードされたパッケージとの差異について説明をする。
3. オーダーメイドサービスの試作品の検査報告書を提出する必要がある。
六、品質管理
1. 企業はオーダーメイドサービス化粧品の事業規模と化粧品のタイプに適応する管理体制を確立し、関連部門の職責と権限を明確にする必要がある。
2. 『化粧品生産品質管理規範』の要求に従って品質安全責任者を設置し、オーダーメイドサービスに適応した品質管理システムの構築と運用を担当させなければならない。
3. 品質保証と制御に関する各種制度を整備する必要がある。
・品質管理システム
・行動記録管理
・サンプル保存管理
・製品検査管理
・原料と製品の品質基準と検査基準の確立
WWIP 注:
オーダーメイドサービスの作業エリアや設備管理、原料と製品管理、サービス管理などの規定も細かく定められています。
七、本規則の実施
1. オーダーメイドサービスに関するその他の要求が、本細則で明確に示されていない場合、関連法規、関連通知に従って実施しなければならない。
2. 浦東新区市場監督管理局は、オーダーメイドサービス条件に対して審査を行う。そして、「化粧品生産品質管理規範検査要点及び判定原則」を参照して結果判定を行う。
3. 本細則は2023年X月X日(未確定)から施行され、試行期間は2年である。
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本規定の意図するもの
WWIPより
当該発表は、備案完了した製品を中国へ輸出後、消費者の個別ニーズに応じたオーダーメイド化粧品のサービスを提供できるとしたもので、ライセンスを取得した企業は、事業所で化粧品の内容物に直接触れる個別サービスを行うことが可能となるものです。
従来はこのような化粧品販売方式は認められておらず、この取り組みは規制緩和と呼べるものです。
また、2022年11月10日に公表された当局通知では、オーダーメイド化粧品サービスは上海を皮切りに5つの省と特別市(上海、北京、浙江省、山東省、広東省)で試験的に取り組むとされており、当局が重視していることを窺わせる規制緩和です。
https://www.nmpa.gov.cn/xxgk/fgwj/gzwj/gzwjhzhp/20221110163204137.html
このサービスを利用した第一号のライセンスが4月26日に承認されました。
企業は「上海ロレアル国際貿易有限公司」で、10分程度で8種類の異なる混合をができる装置を使い、消費者の肌質に合わせたオーダーメイド化粧品を提供すると報道されています。
http://wenhui.whb.cn/zhuzhan/yiliao/20230426/518428.html
日本の化粧品企業がオーダーメイドサービスを展開する場合、海外備案者としてまず境内責任者と協力し、オーダーメイドサービスを提供するために必要なサービス許可を取得することが第一歩と考えられます。そのためには、許可申請条件をクリアする必要があります。そして、海外備案者から境内責任者への授権書、サービス対象製品のパッケージに関して、NMPAシステムに提出をする必要がありますので、中国の規制に基づいて事前に内容をチェックすることが重要です。
また、オーダーメイド化粧品の展開を目指す場合にNMPAの承認申請の時点でどのような申請を行うのかが不透明です。
弊社では引き続きこの規制の正式発表及び他の地域の動向に注目し、オーダーメイドサービスに関する手続きの代行とコンサルティングサービスをお客様にご提供してまいります。
<本件に関するお問い合わせ>
株式会社WWIPコンサルティングジャパン
TEL : 03-6206-1723
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