【中国】上海市、市場監管・司法・公安など八部門が「牟利性職業クレーム・虚偽通報の規制強化に関する意見」を発表

2025年10月31日、上海市市場監督管理局を含む8部門は、近年多発する「職業打假」を名乗る不当請求・悪質クレーム※への対策として、「牟利性職業索賠・虚偽通報行為を依法治理するための意見」を発表しました。(牟利性:利益を目的としている意)
本意見は、正常な消費者苦情・内部通報を保護しつつ、営利目的での悪質クレーム行為を抑制することを目的としています。

※「職業打假」を名乗る不当請求・悪質クレームとは:“消費者保護”を装いながら、金銭目当てでクレームをつける悪質なクレーマーを指します。

原文⬇️

■ 主要ポイント(概要)

  1. 目的と定義
    ・目的: 正常な消費者苦情や内部通報を保護しつつ、「打假(偽造品摘発)」を名目とした営利目的の不当請求・悪質クレーム(牟利性職業索賠・虚偽通報)を法に基づいて規制・抑制すること。
    ・定義: 生活消費の必要性がないにもかかわらず、クレーム、通報、訴訟などの権利を濫用し、不正な利益を得る行為を指します。
  2. 不当請求の判断基準(一部抜粋)
    • 通常の生活消費を大幅に超える大量購入・リピート購入
    • 問題があると知りながら意図的に繰り返し購入する行為
    • 苦情・通報文面が形式化している
    • 他人名義・虚偽情報・組織的な提出など不自然な行為
    • 年間の申立てや撤回件数が異常に多い
    • 軽微な瑕疵のみを理由に金銭を要求
    • 実際の消費関係がないにもかかわらず金品要求
    • 捏造・すり替え等による虚偽の損害主張など
  3. 上記特徴を満たすと判断された者は、一定期間「苦情・通報の異常名録」に登録されます。
    • 名録は関係当局間で情報共有される
    • 名録対象者の申立ては厳格に審査
    • 法定要件を満たさない場合は受理拒否・調停終了
    • 虚偽通報や不当な金銭要求が認められる場合は法的措置
  4. 市場監管、司法機関、警察、行政機関、ネット規制部門などが協力し、以下の措置をとります。
    • 不当クレームの連携監督
    • 重大違法行為の刑事処理
    • 個人が発信する媒体(SNS配信等)を通じた不当クレームの監視
      を強化します。
  5. 事業者への配慮・支援
    牟利性職業クレームが多発する分野(飲食、商業施設、EC 等)に対し、
    • 合規ガイドラインの整備
    • 軽微な瑕疵に対する減免制度の細分化
    • 自己防衛のための証拠保全の促進
    • 適切な法的対応の支援
      が盛り込まれています。

■ WWIPの見解
本意見は、上海市における企業保護・濫用クレーム抑制政策が大きく前進した重要な転換と言えます。特に、海外企業・外資ブランドにとって以下の利点があります。

  • 海外企業にとってのメリット
    1. 標識・ラベルなどの軽微瑕疵を悪用した不当請求の抑制
      従来多かった「軽微な表示の指摘 → 高額和解要求」が明確に制限されます。
    2. 組織的“職業打假”への対応制度が確立
      異常名録制度・部門共有により、企業が不当要求に毅然と対応しやすくなります。
    3. 企業側の手続負担が軽減
      “悪質クレーマー”の申請について、行政側が不受理,調停終了,報奨金不支給などの対応を取れるようになり、内部リソースの浪費が少なくなります。
    4. SNS・ライブ配信による営業妨害からの企業保護が強化
      SNS・動画配信による過度な暴露・不実投稿への規制が強まり、ブランド毀損リスクが低くなります。
  • WWIPとしての提案(企業向け実務対応)
    1. 「異常名録制度」への対応ポリシーの整備
      不当クレームを受けた際の受理基準/証拠収集/行政部門への連携方法を社内ガイドライン化します。
    2. ラベル・広告表示の事前チェック強化
      悪用されやすい表示項目(翻訳誤り、成分名表記、効能表現)を再点検します。
      WWIPサービス:
      中国現地弁護士による専門的な広告チェック
      (お客様が中国で広告・宣伝する内容をWWIPが翻訳し、中国現地弁護士に法的見解を確認してお戻しするサービスです。)
      中国における試験受託サービス
      (安全性や効能評価試験など、広告・宣言内容の実証データが必要な場合に、ご要望に合う試験方案を検討し試験手配するサービスです。)
    3. 店舗・EC運営向けの相談窓口・初期対応マニュアルの整備
      クレーム受付〜内部判断〜行政相談のフローを標準化します。
    4. SNS・動画配信リスクのモニタリングと対応指針策定
      ライブ配信・SNSでの突然の“告発型コンテンツ”に備えた危機管理体制を構築します。
    5. 上海だけでなく、他地域への政策拡大を見据えた全中国的対応
      本制度は上海発であり、今後他都市への横展開が予想されるため、早期対応が望ましいです。

■ まとめ

本意見は、悪質な職業クレーム・虚偽通報から企業を保護するための制度として大きな前進であり、正当な消費者保護を維持しつつ、企業の過度な負担を軽減する仕組みを明確化する内容です。

WWIP CONSULTING JAPANは、中国の最新動向および企業実務への影響について継続的に情報提供し、関連する法令適合およびリスク対策を支援してまいります。


<本件に関するお問い合わせ>
株式会社WWIPコンサルティングジャパン
TEL : 03-6206-1723
Email: official@wwip.co.jp

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