【中国 企業査察】品質管理体制の整備と対応力の構築~査察事例の視点から
1. 背景と目的
近年、中国国家薬品監督管理局(NMPA)による海外企業含む化粧品企業への飛行検査、いわゆる「企業査察」が強化されつつあります。
中国において、品質安全に対する監督体制を強化するという流れを受けて、組織体制、工程管理、記録保存、資材管理等の不備を指摘された製造企業の中には、営業停止命令を受けている事例も報告されています。
ここでは、2023〜2025年8月時点の査察事例から見える違反傾向と、企業が講じるべき対応について解説します。
2. 違反事例の紹介と傾向分析
直近で国家薬品監督管理局から発表された事例は、2023年(25件、25社)、2024年(7件、6社)および2025年(3件、3社)に上ります。
今回調査した違反事例について、企業活動のカテゴリの中でどこに問題があったのか、それぞれ違反となった根拠にあたる法令「化粧品生産品質管理規範 検査要点及び判定原則」(以下「判定原則」と称す)についてまとめました。
カテゴリ | 主な違反事例 | 適用されたNMPA判定原則 |
組織・人員面 | 品質責任者の責任不履行、教育訓練未実施 | 第2章 4~6条、10~11条、第3章 14条 |
品質保証・管理面 | 検査制度不備、記録不備、標識管理不適切 | 第3章 13条、16~17条、第6章 44条 |
生産プロセス管理面 | 登録技術要件に従わない製造、設備・原料管理不足 | 第5章 32~33条、8章 63条 |
カテゴリの比率では、生産プロセス管理面が38%、品質保証・管理面が34%、組織・人員面が27%と、ほぼ偏りなく違反が認められています。
この結果から、製造プロセス自体にとどまらず、原材料管理、検査プロセス、品質保証部門の機能、販売準備の不備や、製品回収制度の未整備といったリスク管理機能の欠如など、違反事例が多岐にわたっていることがわかります。
3. 当局の措置事例の紹介と傾向分析
当局は、これらの問題に対して、状況に応じて、生産・営業の即時停止命令をはじめ、製品の安全性リスク評価、製品リコール、全面的な是正要求を求め、是正完了後の再査察と復産通告まで生産再開を不可とする措置等の徹底した措置を講じています。
2023〜2024年度について、当局からの措置を要因別にグラフにしました。生産・営業停止および是正命令など業務や組織の見直しを含めた抜本的改善を要求するもの、当局からの法的調査への協力依頼、製品の安全性・リスク管理体制評価からの製品リコール、さらには行政指導への対応評価からの会社登記取り消しも含めた厳正な措置が見られます。

当局からの指摘として適用された判定原則の傾向から、13条(記録管理)、44条(不適合品管理)および5条(責任制度)がこの3年間で多く適用されていることから、当局は文書管理、品質管理および生産プロセスにおける責任体制について重点的に確認していることがわかります。
またこのことはNMPAの査察において、品質管理、生産プロセス、組織体制の強化が企業にとって喫緊の課題であることを明確に示しています。当局の厳しい措置は、原材料管理から生産、販売に至る一貫した企業活動を改善する重要性をさらに強調しています。
一貫した企業活動の改善は、企業が法令遵守を徹底し、製品の品質と消費者の安全性を確保するために不可欠です。
4. 今後企業に求められる対応策
これらの違反事例と要因の分析から、各企業が今後どのような対応を求められるか、各カテゴリに沿って整理しました。
- 組織・人員面:教育・研修制度の強化
技術的能力だけでなく、法令理解と運用責任の明確化が不可欠で、組織全体での継続的な教育研修のシステム化が急がれています。 - 品質保証・管理面:品質記録・工程記録の信頼性向上
トレーサビリティの確保を推進すること、特にALCOA/CCEAの運用ルールに着目した作業手順の見直しが必要となります。 - 生産プロセス管理面:原料および委託先管理の透明化
品質協定や供給契約、リスク管理の実効性を確保する内容を盛り込んだ標準作業手順書の運用も、企業にとって大きなアピールポイントとなります。 - 査察対応の体制整備
この他、査察時の対応フロー実行、当局からの通告への即応体制の明文化を司る、直接部門とは独立した査察対応機能についても、違反事例を出さない組織構築のために重要な要素であるといえるでしょう。
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弊社では、NMPAの「化粧品生産品質管理規範」「化粧品生産品質管理規範 検査要点と判定原則」及び査察関連法令に基づいた、中国当局観点での教育訓練(研修・セミナー等)、模擬査察現場改善支援、記録様式の整備、是正報告書の作成(中文対応も可)、そして品質管理体制の強化に向けた戦略立案を支援しております。査察事例から学ぶべきことは多く、事前の予防と事後の是正が鍵となります。
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